もったいない村社長・村山博幸さん /新潟

 ◇工場跡に農産物直売所と葬儀場

 長岡市小国町に、工場跡を改装して、農産物直売所と葬儀場を併設したユニークな「山の駅おぐに もったいない村」が先月、本格オープンした。住民有志が設立した株式会社「もったいない村」が運営。高齢化が進む集落で買い物の利便性を図るため、「御用聞き」に回るほか、これまで葬儀場が小国地域になかったため、市外の葬儀場に出向いていた手間を省いた。同社の村山博幸社長(60)に、地域活性化への展望を聞いた。【岡村昌彦】

 ◇高齢化集落で「御用聞き」 「大変な時に来る」会社に

 −−会社設立のきっかけについて。

 中越地震(04年)や企業の撤退、少子高齢化と、地域に元気がなくなっていった。限界集落に近い集落では、雑貨店もなくなり、生活必需品の購入も難しい状況になった。何かできないかと、07年に有志でNPO法人「MTNサポート」を設立。農産物直売所をイメージして、地域の元気づくりの勉強会を重ね、愛知県や埼玉県の農産物直売の先進地を視察するなどして構想を練った。そこで、地元の野菜を使って事業化しようと昨年6月に会社を設立した。約8000万円をかけて、精密機器メーカーの工場跡と倉庫跡を改装するなどして、先月18日に「山の駅おぐに もったいない村」をオープンした。

 −−社名を「もったいない」としたのはなぜですか。

 中越地震で田畑が荒れ、手をこまねいていた。せっかく資源があるのに生かせないのは、もったいないということで名付けた。

 −−具体的な活動は。

 道路が整備され、小千谷市のスーパーが近くなり、小国地域の集落で買い物ができる場所がなくなるのではないかと思い、農産物直売所を作った。それだけではなく、買い物ができないお年寄りのために、商品を各集落に持っていき、さらに「御用聞き」として要望を聞いたらいいのではないかと思った。

 現在、18集落をそれぞれ週1回、トラックに商品を積んで巡回している。また役場に出す書類の作成サービスなどもできればと思っている。

 −−どのような商品を運んでいますか。

 塩や砂糖、しょうゆやひげそり、地元の野菜など。冬は大変なので、事前に注文を取って商品を届けるようにしたい。

 −−農産物直売所には県内だけではなく、他県の農産物も置いていますね。

 地元の野菜だけで運営するのは厳しいので、他県の農家と直接やり取りをして連携している。山形のモモ、ブドウ、トマト、洋ナシ、静岡の茶、長野のリンゴ、和歌山のミカンなど、各農家から直送してもらっている。各農家と顔が見えるつきあいを心がけている。

 小国に行けば、地元だけじゃなく、よそのおいしい野菜や果物もある、と言われるようにしたい。年間を通じて産地と連携し、他県の野菜などが季節ごとに販売できたらいいなと思う。県内でも、こだわりの農産物や商品を作っている農家、企業と連携していく。

 −−農産物の加工はどのようなモノがありますか。

 米粉の活用や地元の山菜、野菜の総菜も手掛けている。

 −−敷地内に葬儀場も設置しました。

 小国には火葬場はあるが葬儀場がなかった。そのため、小千谷市柏崎市までマイクロバスに乗って往復1時間かけて通わなければならない。葬儀、火葬、火葬後の会食など2往復することもあり、不便を強いられていた。葬儀場が小国にあれば、住民らの不便さを解消し、喪主が支払う費用も地域に還元できる。大八車を地元の大工に改造してもらった霊きゅう車もある。

 −−高齢社会が進む中、どういう会社を目指したいですか。

 限界集落のような集落は、特に冬場の買い物が大変。みんなの役に立ち、「大変な時に来てくれる」と言われる会社に成長していきたい。

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 ■人物略歴
 ◇むらやま・ひろゆき

 1951年、旧小国町(長岡市)出身。旧小国町役場に入り、長岡市小国支所長で退職。「山の駅おぐに」は長岡市小国町法坂720の1。


http://mainichi.jp/area/niigata/news/20111209ddlk15040076000c.html