遺影:人生の輝き 相手に寄り添い撮影 / 福井

 ◇「自分らしい、自分の好きな一枚を残して」

 遺影には生き生きとした表情の写真を使ってもらおうと、越前市で「ミドリ写真館」を経営する写真家、畑勝浩さん(47)が、生前から遺影を準備する新サービス「遺影準備室」を始めた。死後に急いで作ると、あり合わせの写真で味気ない遺影になってしまうことが多く、畑さんは「『これが俺(私)の人生だ』って言えるような、思いを込めた遺影を残してほしい」と話す。

 写真館での撮影は、客との世間話から始まる。妻由紀さん(43)も加わって相手の緊張を解き、「心や生き方に近付き、解釈する」という。自然な笑顔になり、その人の人生がのぞいた瞬間を狙ってシャッターを切る。服装やポーズも自由で、どこまでも相手の意に寄り添って撮影する。

 以前から、遺影のあり方に疑問を感じていた。親族や同級生の葬儀に参列した客が「別人みたいな写真でショックだった」と嘆く声を何度も聞いた。「硬い表情の写真しかなく、毎日見るのはきつい。いつも見ていた笑顔の写真を飾りたい」と話す人も。遺影の多くは、葬儀業者がスナップ写真の小さな顔を大きく引き伸ばしたりパソコンで合成しているという。

 昨年6月、写真館スタッフの父の葬儀に参列し、祭壇の遺影に引きつけられた。色つやのいい肌に、迫ってくるような笑顔。色や光の加減も完璧だった。「失礼ながら悲しくならなかった。『ああ、この人は幸せだったんだなぁ』と感じられる、いい写真だった」。米寿のお祝いで撮った写真という。人生の輝きが凝縮されていた。

 この葬儀がきっかけで9月にサービスを始め、これまでに60人以上の遺影を撮影した。重い病を抱え、1人でやってくる人。家族と楽しげに訪れるお年寄り。さまざまな客が訪れ、多くが満足して帰った。「何十年も生きてきて、何の思いもこもっていない遺影が葬儀で飾られるのはあまりに寂しい。遺影と考えなくてもいい。自分らしい、自分の好きな写真を一枚残してほしい」

 遺影準備室はキャビネット版の写真1枚と写真のデータを保存したCDが付いて1万2000円。問い合わせは同写真館(0778・43・0351)。【山衛守剛】


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