高額解約手数料は不当 冠婚葬祭互助会に地裁が判決

 「手数料の算定根拠が不明確」−。葬儀や結婚式に備え、会費を積み立てる「冠婚葬祭互助会」の解約手数料をめぐる訴訟の判決で、京都地裁が先月、京都市の冠婚葬祭会社が差し引いていた手数料の金額が妥当でないとの判断を示した。同じ程度の手数料は業界では一般的。解約をめぐるトラブルも多いだけに判決の影響は大きそうだ。 (田辺利奈)

 提訴したのは、適格消費者団体のNPO法人京都消費者契約ネットワーク。関西を中心に、結婚式場や葬儀場など約百カ所を展開する冠婚葬祭会社セレマ(京都市)について、「互助会の解約手数料が高すぎる」との情報が寄せられたのがきっかけだった。調べた結果、法令違反があると判断し、二〇〇八年、消費者団体訴訟に踏み切った。

 裁判で原告は、互助会契約の解約時に手数料を差し引くとするセレマの条項は、消費者契約法で定める「平均的な損害」(一般的に事業者側に発生する損害額)を超える違約金を定めていて、消費者の利益を一方的に害すると主張。条項の使用差し止めを請求した。セレマ側は、会員一人一人を管理し、準備をして冠婚葬祭に備え続けなければならないとして、手数料は正当なものと反論した。

 判決では、会員の葬儀は予定が立つものではなく、セレマ側は事前の準備に費用はかからないと判断。手数料は、会員が二回目以降に積み立てる際、セレマ側が銀行側に支払う一般的な手数料として一回五十八円が妥当とし、同社に条項の使用差し止めを命じた。セレマ側は控訴した。

 同ネットワークの事務局長、長野浩三弁護士は、同社の〇八年七月期の決算では、営業利益四十六億円に対し、解約手数料収入が五億三千七百万円あることからも、手数料金額が不当に高額だったと分析する。

 同社の互助会で一口五十万円のコースを選んだ場合、毎月二千五百円を二百カ月積み立てる。解約手数料は、積み立て九回までは全額で、返金はない。十回目入金後なら、二万四千六百五十円。十一回目以降はさらに一回につき二百五十円を差し引く。

 今回の消費者団体訴訟と同時に損害賠償請求を起こした原告八人の多くは、積立額のおおむね一割超を差し引かれていた。

 セレマは「(解約手数料が)大きな収入源かどうかは取り方次第。手数料の金額はわれわれが勝手に決めたものではない」と説明する。同社によると、手数料は業界団体の全日本冠婚葬祭互助協会のモデル約款に準じている。同協会加盟の全国二百四十四社が同様の手数料を採用。同協会は「対応は検討中。判決が確定すれば約款を見直すかもしれない」と話している。

◆貯蓄と思い契約も

 国民生活センターによると、冠婚葬祭互助会をめぐる相談は、〇一年四月から一二年一月中旬までに、計三万二千六百五十六件。〇六年度以降は増加傾向で、毎年三千件を超えている。九割超が契約・解約に関する内容だった。

 愛知県県民生活課が公表している事例では、五十代の女性が訪問販売で「元本は保証されているから貯金のつもりで契約して」と勧められ、十八万円の積み立てを契約。十年後に満期で解約を申し出ると、十五万円しか返金されなかった。「元本保証と言われた」と苦情を伝えたが、業者から「販売員は退社しており、会社とは関係ない。(手数料については)契約時に渡された約款に記載されているはず」と言われた。

 モデル約款では、契約から八日間であればクーリングオフ(無条件解約)ができる一方、その後の解約では手数料が差し引かれる。「貯蓄のようなもの」と思っていた消費者との間でトラブルが多いようだ。

 <冠婚葬祭互助会> 
将来の結婚式や葬儀に備えて毎月数千円ずつを積み立てる仕組み。衣装、祭壇などの値段が割引になり、葬儀の際もスムーズに準備が進む。戦後、各地で生まれ、掛け金をめぐるトラブルが増加したことから、1973年の割賦販売法改正で、通産省(現経済産業省)の許可事業の前払式特定取引になった。

 <消費者団体訴訟> 
2007年の消費者契約法改正でできた制度。消費者一人一人の被害額が小さく、個人で交渉や訴訟をするのが困難な場合、消費者に代わって、内閣総理大臣が認定した適格消費者団体が消費者契約に関する事業者の不当行為に対し、差し止め請求できる。現行では損害賠償請求はできない。

東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/CK2012012602000061.html