献体の意義伝えたい 宮崎大で初の自治体向け説明会

 医学を学ぶ学生たちのために遺体を提供する「献体」について知ってもらおうと、献体登録した人でつくる「宮崎大学白菊会」が19日、宮崎市清武町木原の宮崎大医学部で、初めて自治体向けの説明会を開いた。県と3市3町1村の担当者が参加した。

 同会は1974年に「宮崎医科大学白菊会」として発足。2003年の宮崎大と同医科大の統合により、名称変更した。

 同会によると、会員は亡くなった人を含め、18日現在で2115人。このうち810人が献体となった。残る1305人のうち現在も連絡が取れているのは676人という。

 説明会では、同会の一ノ瀬良尚会長(65)と、宮崎大医学部で解剖学講座を担当する沢口朗教授が、会の活動や解剖実習について解説。無報酬であることや、3親等以内の親族の同意が必要なこと、さらに、遺骨の引き取り人がいる人で、感染力の強い病気にかかっていないこと――などの条件があることが説明され、通夜、葬儀、出棺までは通常と変わらず、出棺後に大学側が遺体を引き取ることも説明された。

 宮崎大医学部では、2年生になった10月から3カ月間、5人1班で、防腐処理された遺体で解剖実習をしている。連日、午後1時〜同9時、献体された遺体と向き合う。学生たちにとっては「一生のうちの最初の患者になり、ずっと覚えている」という。

 「献体を見て相当ショックを受けた。最初にメスを入れるときは怖かったが、学ばせてもらうという強い思いを胸に臨んだ」。実習後、学生たちはこんな追悼文を寄せるという。

 沢口教授は「実習では故人に対する拝礼、黙祷(もくとう)をきちんとしている。実習後は、高校の延長のようでかわいい顔だった学生が、医学生の顔に変わります」と語った。

 学生の教材となった遺体は、火葬され、学生たちが収骨して、遺骨返還式を開く。返還まで2〜3年。涙ながらに「お帰り。立派に社会に貢献したよ」と話す遺族もいるという。

 沢口教授は「学生たちには『学べるのは社会の支えのおかげ』といつも伝えている。学生たちも真摯(しんし)な気持ちで学んでいます」と話した。

 献体する側の一ノ瀬会長は25年前、「世の中に色々迷惑をかけているから、死んだときぐらい社会に貢献したいと軽い気持ち」で登録したという。ただ、ほかの登録者の話を聞くうち、「崇高な気持ちで登録される人がほとんど。軽い気持ちで登録し反省している」と振り返った。

 一ノ瀬会長は「よい医者を育てるために誇りを持って献体するという環境づくりのため頑張っている」と語り、集まった自治体の担当者に「献体に関する窓口を設けて欲しい。住民が市町村に相談しに行ったら、私たちに連絡が来るような仕組みがあれば助かります」と呼びかけた。

 献体の問い合わせや申し込みは、同会(0985・85・1534)へ。(石田一光)

http://www.asahi.com/health/news/SEB201110190035.html