「食」も「喪」も任せて

 メーカーの工場跡を利用した長岡市小国町の農産物直売所に、葬儀場をあわせて設けた「山の駅おぐに もったいない村」が本格オープンした。小国には葬儀場がなく、冬場に市外の会場に通う負担は大きかったので、直売所隣の倉庫跡を改装した。「買い物難民」の支援にもあたる直売所とともに、高齢化が進む地域のニーズを一手に引き受けようとしている。

 施設は、住民有志が昨夏に立ち上げた株式会社「もったいない村」が土地購入や改装に約8千万円をかけ、同市小国町法坂につくった。直売所は8月に仮オープン、葬儀場は今月18日に開業。初めて葬式を執り行った22日には喪服を着た人が式の合間に直売所をのぞく姿も見られた。

 小国には市役所支所(旧町役場)近くに火葬場はあるが、葬儀場がなかった。多くの住民が通夜・葬儀のたび、車で片道30分以上の柏崎や小千谷の会場に通うことになり、通夜、葬儀、葬儀後の会食と、火葬場と葬儀場を往復することも多かったという。

 精密機器メーカーの倉庫跡を活用した葬儀場は延べ約370平方メートルで最大80人前後を収容。ひつぎを乗せ、近くの火葬場まで参列者が綱で引っ張って野辺送りをできる「霊柩(れいきゅう)車」もある。町内の大工さんが大八車を改造してつくった。

 旧小国町の高齢化率は37・8%(4月1日現在)と、長岡市平均(25・3%)や県平均(26・4%)に比べてかなり高い。後継者難などで商店が減り、車の運転ができないと食料購入さえままならない「買い物難民」問題も深刻になってきている。

 2階建て工場跡を利用した直売所では、農産物や加工品の販売や、石臼そばなど郷土食の提供、米粉を使った商品の開発のほか、買い物難民が出ないよう、移動販売車で週4日、小売店のない地域内の約20集落50カ所を巡って商品を売ってもいる。

 生活相談や、高齢者が苦手なパソコンを使った文書作りといった「お金にならない仕事」についても、もったいない村を生み出し、行政や農協などとの連携窓口にもなる地元NPO法人が担う。

 もったいない村の村山博幸社長(60)は「農家や地域との連携を大切に、働く場をつくって小国の元気を取り戻したい」と話している。(松本英仁、角野貴之)

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